風
一
遠きもの
まづ揺れて、
つぎつぎに、
目に揺れて、
揺れ来るもの、
風なりと思ふ間もなし、
我いよよ揺られはじめぬ
二
風吹けば風吹くがまま、
我はただ揺られ揺られつ。
揺られつつ、その風をまた、
わがうしろ遥かにおくる。
三
吹く風に揺れそよぐもの、
目に満ちて、
翔る鳥、
ただ一羽、
弧は描けど、
揺れ揺れて、
まだ、空の中。
四
吹く風の道に、
驚きやまぬものあり、
光り、また、暗みて、
をりふし強く、急に強く、
光り、また、暗む、―
すべて秋、今は秋。
五
輝けど、
そは遠し。
尾花吹く風。
※
北原 白秋 『水墨集』「動き来るもの」より
☆
遠きもの
まづ揺れて、
つぎつぎに、
目に揺れて、
揺れ来るもの、
風なりと思ふ間もなし、
我いよよ揺られはじめぬ
二
風吹けば風吹くがまま、
我はただ揺られ揺られつ。
揺られつつ、その風をまた、
わがうしろ遥かにおくる。
三
吹く風に揺れそよぐもの、
目に満ちて、
翔る鳥、
ただ一羽、
弧は描けど、
揺れ揺れて、
まだ、空の中。
四
吹く風の道に、
驚きやまぬものあり、
光り、また、暗みて、
をりふし強く、急に強く、
光り、また、暗む、―
すべて秋、今は秋。
五
輝けど、
そは遠し。
尾花吹く風。
※
北原 白秋 『水墨集』「動き来るもの」より
☆
by comet1958
| 2010-03-10 20:59
| ことばたち