原っぱ
原っぱには、何もなかった。
ブランコも、遊動円木もなかった。
ベンチもなかった。
一本の木もなかったから、木陰もなかった。
激しい雨がふると、そこにもここにも、おおきな水溜りができた。
原っぱのへりは、いつもぼうぼうの草むらだった。
きみがはじめてトカゲをみたのは、原っぱの草むらだ。
はじめてカミキリムシをつかまえたのも。
きみは原っぱで、自転車に乗ることをおぼえた。
野球をおぼえた。
はじめて悔し泣きした。
春に、タンポポがいっせいに空飛ぶのをみたのも、夏に、はじめてアンタレスという名の星をおぼえたのも原っぱだ。
冬の風にはじめて大凧を揚げたのも。
原っぱは、いまはもうなくなってしまった。
原っぱには、何もなかったのだ。
けれども、誰のものでもなかった何もない原っぱには、ほかのどこにもないものがあった。
きみの自由が。
☆
ブランコも、遊動円木もなかった。
ベンチもなかった。
一本の木もなかったから、木陰もなかった。
激しい雨がふると、そこにもここにも、おおきな水溜りができた。
原っぱのへりは、いつもぼうぼうの草むらだった。
きみがはじめてトカゲをみたのは、原っぱの草むらだ。
はじめてカミキリムシをつかまえたのも。
きみは原っぱで、自転車に乗ることをおぼえた。
野球をおぼえた。
はじめて悔し泣きした。
春に、タンポポがいっせいに空飛ぶのをみたのも、夏に、はじめてアンタレスという名の星をおぼえたのも原っぱだ。
冬の風にはじめて大凧を揚げたのも。
原っぱは、いまはもうなくなってしまった。
原っぱには、何もなかったのだ。
けれども、誰のものでもなかった何もない原っぱには、ほかのどこにもないものがあった。
きみの自由が。
☆
by comet1958
| 2003-09-28 19:00
| ことばたち